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2017.10.28

松葉杖に昇格した。

 

愛しの車椅子はとりあげられてしまった。

夜中の静かな渡り廊下を車椅子で一人、

爆走するのが気持ち良くて好きだったのに。あーあ。

 

 

 

でも行動範囲は少し広まって

これはこれで良いもんだ

 

どれ、今日は"一人スペース"の

新規開拓にでも行くか。

 

 

 

"一人スペース"というのは

読んで字の通り、一人で過ごせる場所のことだ。

一人が好きな僕は、静かで一人になれる時間を

求めていた。

 

基本的にもうずっと病室にいる必要はない。

ちょっとだけ看護師さんを困らせるが

朝昼晩の体温計を計って置いておけば笑って許してくれる

 

病室はベッドがあってのんびりできるものの

周りの人の生活音がどうしても気になってしまう。

特に今は、ちょっとこう、すごいのがいてね。

この話はまた今度しよう。

 

さて、病院内で一人になれるところというのは

結構少ないものである。

もちろんカフェや休憩スペースなどはいくつかあるし

そこに行くことも多いのだけれど

やっぱり完全に一人にはなれない。

 

ドラマなどでよく見る、屋上に期待したこともあるが

実際の病院では屋上を開放しているところは

なかなかないそうだ。

まあ理由は容易に想像できる。

でも外の空気吸えるだけで違うだろうになあ。

欲しいよ屋上。

 

僕は探し回った。

人通りが少なく、静かで、一人になれるところ。

カフェのようにお金を使わなくてもいい、

暑過ぎず寒過ぎず、外の景色が見えたら最高だ。

 

人の入っていない病室。

 

土日だけ休みの外来待合室。

 

出入りが少ない方の玄関ロビー。

 

こういったところを見つけたときは思わずほくそ笑む。

 

今日初めて発見した玄関ロビーは穴場だった。

病院事務系の人間の出入りがほとんどで頻度も少ない。

椅子とテーブルもある。何より静かだ。

少し肌寒いがカーディガンを羽織れば問題ない。

 

したり顔で椅子に座り、本を開く。

 

うん、静か。

落ち着く。

 

かなりいいところを見つけたかもしれない。

子どもの頃の秘密基地に来たような気持ちだ。

 

 

 

 

 

そういえば入院からもう1週間経ったみたいだ。

 

リハビリは順調だし、暇にはもう慣れた。

自分のベテラン入院患者ぶりに、たまに笑えてくる。

 

 

 

この間は後輩がお見舞いにきてくれた。

相変わらず親(おじいちゃん)のような気持ちになる、

かわいいやつらである。

 

その夜、鏡に映る自分はいつもの数倍良い顔をしていて

なんだか笑ってしまった。

一人も好きだけど

好きな人と会うのはもっと好きなんだ。

 

 

入院生活に慣れてる場合じゃない。

とっとと退院して、

会いたい人に連絡をしよう。